2009年12月14日 (月)

涼宮ハルヒの憂鬱

夕暮れの街角を二台の自転車が行く。

ゆっくりと楽しそうに。

二人はしっかりと手をつないで、前へと進む。

女の子はいい笑顔を恐らくは彼であろう男性の方へ向ける。

ずっとそんな暖かい気持ちでお互いを思いやってね、と誰にも聞かれないようにつぶやいてみる。

涼宮ハルヒの憂鬱     谷川流  角川スニーカー文庫

  ★☆☆☆☆

高校の第一日目の自己紹介で涼宮(すずみや)ハルヒは言い放つ。普通の人間には興味がないと。事件を求めて彼女はSOS団を創設した。

中盤でハルヒの正体がわかるまでが非常に退屈で、もう少しで読むのをやめるところだった。そこからは登場する人間がすべてありえない設定で、男性の願望そのもののラストといい、いかにもアキバ。アニメ化もされているが、なぜ人気があるのか私には理解不可能だったが、むすこは面白いといって一気読みしていた。内容はともかくとして、お子さんに読書の習慣をつけたい親御さんにお勧めかも?!

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫) Book 涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

著者:谷川 流,いとう のいぢ
販売元:角川書店
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2009年11月15日 (日)

パラドックス13

展覧会に行く。

洋画と日本画をゆっくり鑑賞する。

年齢のせいだろうか、日本画が好ましく感じられることにいささか驚く。

日本画の押し付けがましくない色合いや、絵のもつ力が心地よい。

なかでも明るい色調の風景画に心が癒される。

沢山の作品の中には理由なくひきつけられるものがあって、そういう作品の作者を見ると、私と同じ街の出身であることに気づく。

その絵は私のふるさとの、風景なのだ。

疎遠になり、滅多に思い出すこともない風景だった。

パラドックス13   東野圭吾  毎日新聞社

  ★★★☆☆

13時13分突然、地上から人々が消えた。ごく少数の生存者を残して。さらに天変地異が生存者に襲い掛かる。それは科学者によってあらかじめ割り出され、各国の中枢には知られていた13秒間に起こるP-13現象だった。

映像化が前提のような筋運び。登場人物もどの俳優がいいかな、などと思いながら読み進んだ。13人の生存者のうち、警察官の兄弟、誠哉と冬樹が中心となって物語が展開する。

理性とカリスマを備えた誠哉の言葉が心に残る。極限の時、人は何を拠り所として生き抜いていくのか。本当に善悪は変わるのか。感情を優先にする弟が対比の存在として描かれている。

私達が生きている社会は先達が作り上げたものであること、何もしていないようでも、働いて収めた税金を納めてきており、社会のインフラはその税金で作り上げられたもので、そこに生活させてもらっているのだから、目上の人たちには感謝し、敬うべきだというくだりには、本当にそうだ、と反省させられたことだった。

パラドックス13 Book パラドックス13

著者:東野 圭吾
販売元:毎日新聞社
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2009年8月 1日 (土)

蒲生邸事件

雑誌を見ていて衝撃を受けた。

それは江戸時代が始まった頃に作られたお地蔵様の写真だった。

お地蔵様の頭の先からつま先まで、紐でぐるぐる巻きにされているのだ。

前を見ることも出来ず、おそらくは身動きすることも出来ないといったほどに。

そのお地蔵様を紐で縛ると願いがかなうという。

400年もの間、さまざまな人々の沢山の願いをかなえてきたのだろうか。

命がけの願い、ささやかな願い、愚かな願い。

紐に込められた願いを裁くことなく、愚痴ることなくそんなにも長い間。

必ずお地蔵様に会いに行こう、そう思いながらその小さな写真をじっと見つめた。

私もその時紐を持っていくのだろうか。

それでもきっと許して下さるだろう。

蒲生邸事件  宮部みゆき  文春文庫

  ★★★★☆

孝は予備校受験のために宿泊していたホテルで火災に巻き込まれる。意識が戻った時彼がいたのは昭和11年、2・26事件直前の蒲生邸だった。

かなりの長編だが、さすが宮部作品、一息に読んでしまった。時間旅行者が過去に行って歴史を変えるという、お決まりのパターンなのだが、それに歴史の重さ、命の尊さ、平凡であることの有難さが織り込まれている。蒲生大将とその家族は宮部氏の創作だけれど、史実も存分に織り込まれ読み応えがあり、考えさせられることも多かった。

私もやはり思う、人生をやり直せるとしてもそうしたくないし、歴史を書き直す必要は全く無いと。愚かな過ちや愛する人を失う苦しみは出来るものならなかったことにしたいけれど、全てのことには意味がある。過去を受け止め、もがきながらも生き抜いていくことが定めであるし、価値のある人生なのだと。

蒲生邸事件 (文春文庫) Book 蒲生邸事件 (文春文庫)

著者:宮部 みゆき
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2007年2月13日 (火)

ブレイブストーリー

博物館に行く。

レプリカの骨で作られた実物大の恐竜の数々。

首長竜は首だけではなく尾も随分と長く、曲がるようにして展示してある。

下からも骨が見えるようにと、レバーの上にまたがるように恐竜の模型が載せてあって、それがぐるぐる回るので、まるで串刺しにした恐竜の丸焼きを作っているようなものもあり意外と楽しめた。

なかでもティラノサウルスは人気の恐竜で、全身のものだけでなく、パーツ別の骨も展示してあった。

なんとなく眺めていたら、側で見ていた大学生くらいのカップルの男性の方が突然大きな声を出した。

「うそだろ!・・・・ティラノってこんなに顔が細いのかよ!?」

確かにティラノサウルスはりっぱな馬面だった。

ブレイブ・ストーリー  宮部みゆき 角川書店 SF

  ★★★★★

ワタルは小学5年生。ある日突然お父さんは愛人の元へ出て行った。僕達の生活を取り戻すため、悲しんでいるお母さんを救うため、願いを叶えてくれるという女神様に会うべく幻界へと旅立つ。僕は目的を果たせるのか。そして旅に誘ってくれたミツルと僕の運命は? 

昨年アニメ化された子供向けのストーリーなのに、宮部さんの文章力の賜物で恥ずかしいくらい何度か涙した。大人たちの勝手な言い分やそれに振り回される子供の心、旅の最後の悲しい別れにまるでワタルになったように悲しく同調してしまった。熱く、そして正しいことが正面きって書かれているのに、素直に感動してしまう。なんだか、心がすっきり洗い流されたようだった。学生の頃、新書のたぐいの小難しい本を沢山読んだけれども、今になって思うのは、心が前向きになれるもの以外はアクセサリーのような教養にはなっても、ぐちゃぐちゃ捏ねた学問は生きていくためにはほどんど役にたたない。エンターテイメントと馬鹿にするなかれ、中学生くらいの人にこそ読んで欲しい本。ボリュームはあるけれどハリーポッターより面白いよ!

ブレイブ・ストーリー (上) Book ブレイブ・ストーリー (上)

著者:宮部 みゆき
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ブレイブ・ストーリー (中) Book ブレイブ・ストーリー (中)

著者:宮部 みゆき
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ブレイブ・ストーリー (下) Book ブレイブ・ストーリー (下)

著者:宮部 みゆき
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2007年1月31日 (水)

チグリスとユーフラテス

少女の頃、朝が大嫌いだった。

また一日が始まってしまうのかと、暗い気持ちを抱えて目覚めたものだった。

自分の環境を嘆き、なんとかノルマをこなすように毎日を過ごしていた。

それにも関わらず、私は明るい将来への希望があった。それを馬鹿にしない友人があった。問題を抱えてバラバラではあったけれども、肩を寄せ合う家族も。

ほんの少しの良いことに心を向けて毎日を過ごす、そうやって少しずつ時間が経っていた。

いくつかの素晴らしい出会いがあって、いつのまにか幸せだ、と思える今の自分がいる。

チグリスとユーフラテス  新井素子  集英社  SF

  ★★★★★

地球から移民した人たちが住んでいた惑星ナイン。移住当初は繁栄したものの急速に人口が減少していき、「最後の子供」となったルナは、コールドスリープで眠っていた過去の人々を起こしていく。ルナは、そしてナインに一体意味があったのか、どうなっていくのだろうか。

高校生の頃、夢中になって読破していた新井さんの最近のSFを見つけて、懐かしくて思わず手に取った。主人公の独り言で話が進んでいくという文体と、少女趣味な世界観は全く変わっておらず、半ば驚きながらそれでもすっかり堪能してしまった。難点を言えば、どの年齢層の口調も同じで、90歳の女性まで「なんつー、えーい、もおっ」と話しているのはかなりの抵抗があった。でも自分自身を振り返ってみると、少女の頃から口調は変わっていない気もする、老婆になっても同じ口調というのは・・・正しいのかも?!

チグリスとユーフラテス Book チグリスとユーフラテス

著者:新井 素子
販売元:集英社
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2007年1月23日 (火)

ドリームバスター

以前にも書いたように、テニスが楽しい。

何も考えず、単純に嬉しかったり、悔しかったり。

大人になってから始めた趣味は、スポーツに限らずなんでも楽しいのだけれど、気持ちとは裏腹に、いかんせん腕前はなかなか上がらない。

ラケットを振れば入らなくていい力が入り、バタバタとコートを駆け回る。

先日、コーチが私を見て真顔で尋ねた。

「あなた、いのしし年?」

・・・猪突猛進。

ドリームバスター   宮部みゆき  徳間書店 SF

  ★★★★☆

DB(ドリームバスター)は夢の中に逃げ込んだ逃亡犯を追う賞金稼ぎ。少年のシェンはマエストロと出会い、逃亡犯の母を捜すためDBとして生きていく。

この人のミステリは文句なく面白いけれど、SFもやっぱり期待を裏切らない。作品ごとに変わる文体も、作者の人間への愛もやはり同じで、どんな人も丁寧に書かれている。ずっとこのシリーズを読んでいたいような、早く結末が知りたいような・・・。

ドリームバスター Book ドリームバスター

著者:宮部 みゆき
販売元:徳間書店
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