2009年9月11日 (金)

告白

文化祭費は払っておいたから気にしなくてもいいよと担任の先生はそっけなくそう言った。

家庭の事情で公立高校の授業料は免除になっていたが、我が家の家計が苦しいことを重々承知だった先生の暖かさが身にしみた。

堂々とアルバイトが出来るようにと特別の許可を学校に取り付け、アルバイト先も訪ねてくださった。

アルバイト先の採用担当者も本当は高校生は採らないんだけどね、と前置きし、僕も同じような身の上なんだよ、と採用してくれた。

友人もみんな暖かかった。

その後のアルバイト先の小さなレストランでも、いつも多めにアルバイト代が入っていた。

不幸だと思っていたあの頃を思い出すと、周りの人々の愛に恵まれたなんという幸せ者だったのだろうと感じ入る。

告白   湊かなえ 双葉社

  ★☆☆☆☆

教師の幼い娘が勤め先の中学で事故死した。しかし、事故ではなく彼女が受け持ったクラスの生徒による殺人だという。真相は、そして彼女の意図とは・・。

エイズ、夜回り先生、家族に毒薬を使用した生徒とどこかで聞いたような境遇の登場人物がテンコ盛りだ。

読み進むうちにやりきれない思いが膨らんでいく。良い人間が一人も出てこないのだ。どこかに光明があるのではと思いながら頁をめくったが、結末も最悪だった。

善人そうに振舞っている人間も全て本性は悪であるという考えのもとに作品が描かれている印象を受けた。たった一人のかけがえのない子供を殺された母親が、復讐を誓う気持ちは痛いほどわかるが、あまりにも救いがないのだ。作者は問題提起をしたかったのかもしれないけれど、後味の悪い読後感が残るばかりだ。なぜこのような作品が本屋大賞なのか理解に苦しむ。売るためなら作品の思想などどうでもいいのだろうか。

世に広く受け入れられている作者はやはり根底に人間愛がある。私は人は愛深く強く素晴らしい存在だと思う。

告白 Book 告白

著者:湊 かなえ
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2009年8月13日 (木)

訪問者

幼かった頃はまだのどかな時代で、お客さんが来ると「外で遊んでいらっしゃい」と言われたものだった。

そんな時はいつもそわそわして、ただ雑草を引き抜いたりして、あまり楽しくなかったことを思い出す。

お客さんが持ってきたお土産が気になってしかたがなかったのだ。

大抵、子供がいるうちだからと高価な洋菓子だった。滅多にケーキなど食べられなかったし、いかにも高級そうな缶の箱に入ったクッキーやビスケットは特別のものだった。

その日はプリンだった。ケーキ屋さんの本物のプリンよと母が言う。

お客さんが帰った後、待ちかねて食べてみると全然美味しくなくて涙が出た。どうしたのかねぇという祖母の声を聞きながら、「苦い」と言えず外に出て、カラメルの部分を外に吐き出した。こころが痛かった。

もっとも今では、苦いプリンを平気で食べるこどもと、美味しいねと一緒に味わうのだけれど。

訪問者  恩田陸  祥伝社

  ★★★☆☆

初老の兄弟が集う湖近くの豪邸に、事故死した映画監督の親友がやってきた。豪邸の持ち主だった女夫人も不慮の死を遂げているようなのだ。不可思議な死の真相は明らかになるのだろうか。

各章がほとんど同じ文章で始まっていて、いつどんな展開になるのかと思える導入だ。豪邸とその周囲だけで物語が進んでいき、そのまま舞台化出来そうだ。事実、この作者は芝居を題材にした小説もいくつか発表していて、そういったことも視野に入れているのかもしれない。

個人的な趣味の相違だとは思うが、「中庭の出来事」以外の芝居テーマの小説がイマイチだったように、この作品も恩田作品としては若干期待はずれだった。とはいっても、充分に面白かったのだが、期待値が高いのでどうしてもそう思ってしまう。

リセシリーズの新作はもう出ないのだろうか。

訪問者  /恩田陸/著 [本] 訪問者 /恩田陸/著 [本]
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2009年5月10日 (日)

容疑者Xの献身

体調がすこぶる悪いので、夕食は出来合いの弁当で済ませることにする。

こどもが「お弁当おいしかったねぇ」と嬉しそうに言うので、大人気なく答えてみる。

「お母さんのご飯はそんな風にほめてくれないね。」

するとこどもはニッコリ笑って「おかあさんのご飯はもちろんおいしいよ。それに買ったお弁当はかたむいてるし。野菜がないでしょ。」

それはかたよっているというんだよ、という言葉はもったいないから言わなかった。

すぐにそんな言い間違いはしなくなるから。

そうしてありふれた沢山の難しい言葉で、話すようになってしまうから。

容疑者Xの献身 東野圭吾 文藝春秋 ミステリー

  ★★★☆☆

直木賞受賞作。隣人の母娘を守るため、天才数学者の石神がとった行動とは・・・・。

映画化もされ大ヒットした作品。話題になったので当時は敬遠していたけれど、今回図書館で見つけたので読んでみた。ドラマ化するのにぴったりの平凡なストーリーだなと思いながら読み進んでいたものの、やはり東野作品だけにラストのひとひねりが面白かった。でも、Xの動機がやはりいまいちしっくりこない。理が通れば人の道をそんなに簡単に外せるほど、人の命は軽いものなのだろうか。

私の勝手な思い込みかもしれないけれど、この話は作者にとっての全力投球の作品に思えない。『天空の蜂』の方がガリレオシリーズより数倍力作だと思うし、やはり最高傑作は『白夜行』だろう。直木賞はなんだか納得いかない作品が多い。諸事情があるのかもしれないけれど、作品ではなく人に与えるようにしたらいいのに。

容疑者Xの献身 Book 容疑者Xの献身

著者:東野 圭吾
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2009年2月19日 (木)

Q&A

おっとは、ショッピングセンターが好きである。

どれくらい好きかというと、私のことより好きなのではないかと思うくらいである。

新しくオープンしたと聞きつけようものなら、素早く車で馳せ参じ、嬉々として歩き回る。

けれど、一人で行くのは嫌な様子で必ず家族を誘う。

大喜びでお供をしていたこどもも大きくなり無碍に断るので、しかたなく私がお供する。

しかし私がなによりニガテとしているのは、人ごみ、とりわけ行列である。

おっとが年甲斐も無く嬉しそうに頬をゆるめ、行列に並びたがっているのに気がつかない振りをしながら、ショッピングセンターって世の中に幸せをもたらしているのかも、などと考察する。

Q&A             恩田陸   幻冬舎  ミステリー 

  ★★★☆☆

ショッピングモールで多数が死傷する事故が起きた。少しずつ明らかになったことは、予想もしていないことだった。

物語の前半は、タイトルどおり被害者への質問と回答によって進められていく。ありえなくも無い設定と展開に、読了後改めて恐怖を感じた。場の空気のようなものに大衆心理が突き動かされていく様が、淡々と解明されていく。一人一人から、事故とは全く関係なさそうな事実も拾っていくのだが、それも事故の遠因ではと思わされてしまう。

昨年はこのブログにアップする暇もないくらいに、この作者の作品にどっぶりハマリ、ほとんど読破してしまった。好みはあると思うけれど、やはりこの作者が力量を発揮するのは本屋大賞を受賞したもののような作風より、この手の作品だと思う。これほど上手い作家がどうして未だ直木賞をとれずにいるのか、甚だ疑問。

Q&A (幻冬舎文庫) Book Q&A (幻冬舎文庫)

著者:恩田 陸
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2009年1月15日 (木)

最愛

通勤電車はずっと嫌いだった。

その時間が無駄だし、人が多すぎて不快なことこの上ないと。

ところが、随分久しぶりに勤めに出て、また通勤電車に乗るようになったら、非常に楽しいのだ。

吊り広告を眺めるのは面白いし、窓の外の景色もきれい。

ゆったりした気分で予定を確認し、メールをしたり、読書も出来る。

周りの人をこっそり観察するのも興味深い。

そして何より電車に乗ること自体が楽しい、私のためだけの時間を過ごせるということが。

この十年というもの、私の時間は全て誰かのためのものだった。

こんな風にささやかな幸せに感謝することが出来るなんて、人生無駄というものは何もないのだ、とまた気づく。

最愛    真保裕一   新潮社  ミステリー

  ★★☆☆☆

押村のもとに、音信不通だった姉が事件に巻き込まれたと警察から連絡が入った。姉が危険な状態であるにもかかわらず、夫は病院に現れない。押村は真実を知ろうと動き始めた。

主人公の姉に対する思い入れがしっくりこず、それは作者が男性で、私が女だから違和感があるのかと思いながら読み進んだ。強く、自分の生き方に自信を持つ女性と繰り返し主人公に言わせているのだが、境遇を言い訳にして周囲に怒りをぶつける短絡的な女性としか思えないのだ。落しどころにもがっかり。さすがの文章力で読まされてしまうのだが、姉の魅力がさっぱり理解できず、その結果、この作品の魅力が損なわれているような気がしてならない。

もっとも作者はそういう人間の弱さを描きたかったのかもしれない。身を持ち崩さずにはいられない人間、そしてそんな人に惹かれて一緒に落ちてしまう人間の業を。

最愛 Book 最愛

著者:真保 裕一
販売元:新潮社
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2008年11月 9日 (日)

うたう警官

「若いというのは、恥ずかしいということです」

以前読んだ本にそんな一文があった。

当時の私はまだうんと若くて、その言葉を笑い飛ばしたものだった。

しかし月日を重ねて、自分を振り返るような年齢になってくると、その言葉が時折思い出されるのだ。

そして、実感させられてしまう。

未熟なあの頃の私、不遜なあの頃の私、思い上がったあの頃の私。

そんな自分を思い浮かべると心の底から恥ずかしいのだ。

なかったことに出来ればどれほどいいだろう。

すこしは分別がついた今の私なら、もっと上手に振舞えたのに。

けれど、蒼かったあの頃を思い出して、それでも私はこう思う。

「若いというのは、素晴らしいということです」

うたう警官  佐々木譲 角川春樹事務所  ミステリ

  ★★★☆☆

婦人警官が殺害された。次の日には彼女と個人的な付き合いのあった警察官が指名手配され、射殺命令も下された。異常とも思える迅速な展開に、彼を信じ、組織に疑問を持つ人間達の極秘操作が始まった・・。

テンポがよく、一気に読破した。警察内部をテーマにした小説を読むと、フィクションであるとわかっているのに、つい憤ってしまう。学歴が高いというだけで別格扱いされるキャリア組の腐敗。なぜ、現場で地道で辛い捜査を重ねて経験を積んだ人間がトップに登っていかれないのか。実力のある人間が登用されてしかるべきなのに、最初から昇進の道を分けてしまう必要性があるのか。社会の恥部、嫌なこと、苦しいこと、悲しいこと、許せないことばかりを扱い、世の中を守る仕事なのだからこそ、内部の人間に優しい組織であるべきなのにと。

・・・もっとも、私を含め家族友人知人に警察関係者はいないので、腐敗の真偽のほどはわからないのですけれども。

うたう警官 Book うたう警官

著者:佐々木 譲
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2008年5月20日 (火)

麦の海に沈む果実

そこには立派な薔薇のアーチがあり、大輪の薔薇が咲いている。

沢山の白い薔薇の中に、ちらほらと真紅の薔薇もありそれは見事なものだ。

けれど人がほとんど見当たらない。

いつもは、近所の子供たちや老人達がのんびり過ごしている場所なのに、大輪の華が開くこの季節はなぜか閑散としている。

かくいう私もゆっくり楽しもうとしないのはどうしてだろう。

芳しい香りを漂わせて大振りの花が堂々と咲き誇っている。

重すぎる花のために、か細い枝がひどくしなって、花が不安定に揺れるのもお構いなしに。

そんな様子をしばらく眺めているとなんだか落ち着かないのだ。

気高い薔薇の生命力に圧倒されてしまうのだろうか。

今日も薔薇が美しく咲いている。

麦の海に沈む果実  恩田陸  講談社 小説

  ★★★☆☆

そこは経済的に恵まれながらも、複雑な家庭の子息達が集められた全寮制の中高一貫校。湿原に面した学校へ2月にやってきた理瀬の、亡くしたものを取り返す日々が始まった。

登場人物はみんな謎めいていて、独特の雰囲気に包まれた恩田ワールドで一気に楽しめてしまう。話の筋とは直接関係ないのだが、前回読んだ『黒と茶の幻想』に出てくる人物と同一と思われる少女がいて、そこも楽しめた。他の登場人物も他の作品に登場しているのかしらと、ぜひ他の作品も読まなくてはという気にさせられる。う~ん、売り方がうまい。

でも、面白いから読んでしまうんです、これが。

麦の海に沈む果実 (講談社文庫) Book 麦の海に沈む果実 (講談社文庫)

著者:恩田 陸
販売元:講談社
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2008年3月24日 (月)

異邦人

異国の人と恋に落ちて妹は旅立った。

その人との子供を授かり、その人の祖国へ向かうために。

会うたびに彼女は、少しずつ異国の匂いをさせていき、その国の人になっていく。

生まれ育った国の政治はわからなくとも、その国の選挙について熱く語り、

自分の国の歴史を姉妹で話し合ったことなどないのに、その国の歴史について教えてくれるのだ。

変わっていく彼女のことがなんとなく寂しいような、ほほえましいような。

けれど、食べ物は日本のものが恋しいらしく、梅干しにお味噌やおせんべいやらおまんじゅうといいながら、目を輝かせる。

そんな彼女の小さな興奮を見て、「うん、芯はまだまだこの国の人なんだなぁ」となぜかほんの少しだけ、安心する。

異邦人   P.コーンウェル 講談社  ミステリ

  ★★★★☆

スカーペッタシリーズ第14作。

イタリア旅行中のアメリカ人女性テニスプレーヤーが惨殺された。その事件は複雑にからむ事件の一端だった。

この作品が楽しめるところは、事件の内容だけでなく、長く続くこのシリーズのおなじみの登場人物たちの関係が時とともに変化していき、それが気になって新作が出るたびに読んでしまう。正直に言って、最近の何作かはあまりいい出来ではなかったように思うのだけれど、この作品は久々の秀作だと思う。

女主人公に20年以上も片思いを続けている元刑事マリーノが、作品を重ねるごとに魅力のない人物になっていくのが残念。私はこういう味のある脇役が大好きなのだ。マリーノをなんとかできないでしょうか、コーンウェルさん。

異邦人 上 (1) (講談社文庫 こ 33-26) Book 異邦人 上 (1) (講談社文庫 こ 33-26)

著者:パトリシア・コーンウェル
販売元:講談社
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異邦人 下 (3) (講談社文庫 こ 33-27) Book 異邦人 下 (3) (講談社文庫 こ 33-27)

著者:パトリシア・コーンウェル
販売元:講談社
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2008年1月19日 (土)

風の墓碑銘

私は、新聞を端から端まで読むのが好きだ。

こんなこと言うと、なんだかインテリぶっていると勘違いされるので人には言わない。

私が特に楽しみに目を通しているのは、広告の部分だ。

テレビのCMと違い、単に商品とその値段を紹介しているだけの単純なものなのだが、こんなもの買う人がいるのだろうか、というような商品が頻繁に広告されている。

私にはありがたいのかどうか全くわからないようなものがえらく高額だったりして、そんな広告を見つけると、どんな人がこういうものを買うのかとあれこれ想像をめぐらす。

記事と記事の隙間にある小さな広告も、さっぱり意味がわからないものがあったりして、もしかしたら、すわ暗号か?重大な何かがやりとりされているのか、などと小さく興奮する。

そういえば、今日の新聞にも面白いものがあったんだっけ。

風の墓碑銘(エピタフ)  乃南アサ  新潮社 ミステリ

  ★★★★☆

音道シリーズ。

東京下町の借家跡から男女と胎児らしき白骨死体が発見された。その後、所有者の老人が隅田川公園で撲殺されるが、彼が入居していた老人ホームのスタッフの青年には前科があった・・。

このシリーズはなんといっても長編がいい。今編も一気に読んでしまい、寝不足になってしまう。事件そのものというより、この音道の男を見る目の無さと言おうか、頑固で融通がきかないところといおうか、そういう人間としての嫌なところが上手く描かれていて、つい感情移入してしまい、ぐいぐい引き込まれていく。でも、私がいつも感情移入してしまうのは、彼女に正当に評価されていない中年刑事の滝沢の方なのだけれど。だって、女のずるさはよくわかってますからん。

風の墓碑銘 Book 風の墓碑銘

著者:乃南 アサ
販売元:新潮社
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2007年12月25日 (火)

所轄刑事・麻生龍太郎

クリスマスの朝、こどもは飛び切り早起きして大喜びしていた。

サンタさんがやってきたからだ。

子供部屋からおもちゃを抱えて「おかあさ~ん、見て、見て!」とやってくる。

文字通り弾ける様な笑顔で。

普段は何度も起こしたあげくようやく目覚めるというのに、今日は普段より一時間も早い。

そんなに早く起きたのに、出かける前におもちゃで遊んでしまい、いつもより慌しく出かけていった。

その後、こどもの部屋を片付けているとシールの裏に書いた手紙がおいてあった。

「さんたさん、来てくれてありがとう」

所轄刑事・麻生龍太郎   柴田よしき  新潮社 ミステリ

★★★☆☆

本当は白バイのりになりたかった。新米刑事の龍太郎はそんな想いを抱きつつも、地味な案件を事件として解決していく才に恵まれている。大学時代からの恋人とは未来は考えられないのに、別れることもできないまま続いている。捨て鉢なわけでない、でも満たされない一人の男がいる・・。

短編集。主人公は恵まれているにもかかわらず現状に満足していない。臆病なのか、欲張りなのか、仕事に対する姿勢も、恋人との関係も受身で全体的にトーンが暗くなりがちな作品だった。それなのに引き込まれてしまうのは、実際の生活でも、理想とは違った現実に折り合いをつけながら、自分を納得させて生きていくのであり、それがシビアに描かれているからなのだろうか。警察小説で主人公が男色というのも、女性作家だからこそという気がして面白かった。

所轄刑事・麻生龍太郎 Book 所轄刑事・麻生龍太郎

著者:柴田 よしき
販売元:新潮社
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