2009年7月 2日 (木)

科学の扉をノックする 

願いが一つだけ叶えられるとしたら、どんなお願いをする?とこどもが尋ねる。

そうねぇとしばし考えてみる。

普段はあれも足りない、これも不満足と思っているくせに、途端に何も浮かばない。

お金持ちになるとか、何か無いの?と重ねて聞いてくる。

もちろん私だって人並みの願いや悩みはあるけれど、大いなるチカラを使ってまで叶えたいような願いはないのだ。

今のままで充分だよと言おうとしてはたと思いつく。

いつまでたっても上達しないテニスの、素晴らしい才能が欲しい。

科学の扉をノックする  小川洋子 集英社

   ★★★★☆

7つの分野の専門家に作者が会いにいったルポ。

文系の筆者が科学について理解したことを書いているので、非常にわかりやすく面白い読み物だった。

私がとりわけ興味深かったのは、遺伝子学者、遺体科学者の項だった。

遺伝子をつきつめていくと万物が共通の要素から出来ていることがわかるという。見事なまでの規則性があり、サムシンググレートと呼ぶしかない力を感じると。

そして作者の遺体学者への思いのめぐらし方が、まさに作品のモチーフや作風と重なっていてルポなのか、小説なのかわからなくなるほどだ。

それにしても、私達は実に色々なものに囲まれて生きており、誰も気づかないようなものにも心を奪われて人生をささげる人がいることに驚く。

科学の扉をノックする Book 科学の扉をノックする

著者:小川 洋子
販売元:集英社
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2009年4月19日 (日)

「婚活」時代

「ブログ見てください。」と若い彼らは言いあっている。

目の前にいるんだからお互いに話をしたらいいのに、と思いながら聞いていない振りをする。

大切なことや、心の叫びはみんなブログにあるという。

大事なことほど直接伝えないといけないし、ブログやSNSは不特定多数の人に発信する公のものなんじゃないかな、という言葉も飲み込む。

私にも見てくださいというので「私みたいな年上の人間が見てもいいの」と尋ねるとぜひと素晴らしい笑顔を返してくれる。

リアルと彼らがいう世界だけで生きてきた私は、しばしば混乱する。

でも思い至ったのだ。平安の人達が和歌を詠みあうそんな感じなのだと。あの時代の人間関係は歌を交し合うことでなりたっていたのだ。

そして恋は、実際の人となりよりも和歌の腕前が重要だったということに。

「婚活」時代   山田昌弘・白河桃子 ディスカヴァー携書 

  ★★☆☆☆

なぜ、現代の男女はなかなか結婚しないのか。その理由を解き明かす書。

女性にとって恋愛も就職も自由な時代になったが故に、女性は自分磨きをするほど縁遠くなり、男性はガラスように傷つきやすい心で理想の相手を待っている・・・これが現実なら、本当に怖い。この本では、男性には勇気を出し、そしてとにかく女性のいる場所へ行けといい、女性には男性に積極的にアタックしろといっている。

マスコミは「就活」、「婚活」と新しい言葉で次々に若い人達をいたずらに煽っているように思えてならない。人生の一番重大な選択であることは間違いないけれども、縁結び、という言葉もあるように、人智を超えた不思議なものが結婚にはあると思うのだ。当事者だけが努力しても結ばれない縁(えにし)はあるし、紆余曲折を経て一緒になる二人もある。

それに、始まりくらいロマンティックじゃないと長い結婚生活やってらんない。

「婚活」時代 (ディスカヴァー携書) Book 「婚活」時代 (ディスカヴァー携書)

著者:山田 昌弘,白河 桃子
販売元:ディスカヴァー・トゥエンティワン
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2009年1月31日 (土)

奇跡のリンゴ

小雨交じりの通勤時間帯、おっとを駅まで車で送る。

通り過ぎるバス停には、結構な数の人たちがならんでいる。

みな寒そうに背中を丸めている。

今朝は吐く息が白くなるほど冷え込んでいるのだ。

よほど寒いのだろう、小刻みに体を揺らしている人もいる。

さまざまな年齢の色々な服装をした人たちが並んでいる。

一人の例外もなく、バスがやって来る方向をひたすら見て立っていた。

奇跡のリンゴ-「絶対不可能」を覆した農家木村秋則の記録-  

                         石川拓治  幻冬舎

  ★★★★☆

不可能と言われた無農薬、無肥料でりんごを収穫する木村さんとその家族の成功までの軌跡。

夢に取り付かれた男はいい。ただひたすら夢を追っていればいいのだから。この本は、彼自身というより、彼の夢を黙って支え、信じ、共に歩いた家族の物語だと言える。婿養子を周囲から守った義父の心、勘当だといいながら夜中に野菜を軒先に置いていく木村氏の両親、膨大な農作業にひたすら従事した義父母と妻、彼が弱音を吐いたときにやめるなんて冗談じゃないと怒りを表した小学生の娘の姿に、何度も涙を拭いながら一息に読破した。

ようやく実がなってからも売れるようになるまでがまた一苦労。

今では彼のりんごは入手困難というほどだが、彼はお金には無頓着らしい。でも、農業の発展のためには儲からないと後に続く人がいなくなる。貧乏に耐えた自分の家族のためだけでなく、食物自給率が低いこの国の将来のためにも、りっぱな農業をすれば人が羨むような生活をできると世に示して欲しい。

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録 Book 奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録

著者:NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」制作班,石川 拓治
販売元:幻冬舎
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2008年3月31日 (月)

裁判長!ここは懲役4年でどうすか

桜が花開くと、どうしてこんなにも街は華やかに色づくのだろう。

いつもと同じ道、いつもと同じ風景なのにずっと美しく感じるのだ。

歩いても、自転車でも、車で流しても。

取り立てて嬉しいことなどなくとも、心が軽やかに弾んでいるのがわかる。

満開の桜を眺めていると、通りすぎたちっぽけな思い出や、心に貯めていた哀しい気持ち、そして今過ぎ去ろうとしているこの時間も、なんだか特別の素敵なものに思えてくる。

毎年間違いなくこの季節が巡ってくることを感謝して、桜をただ眺める。

裁判長!ここは懲役4年でどうすか  北尾トロ  文春文庫 ルポ

  ★★★★☆

裁判所とは無縁だった作者が、この本の執筆のため傍聴した裁判について、作者のイラストを交えて紹介している本。

裁判員制度が始まるという。恥ずかしながら私は、それがいつ、どのように始まるのか今もってわからない。新聞などに掲載されている広告では詳細が全くわからないのだ。あれで理解できる人がいたら、お目にかかりたいくらいだけれども、文句ばかり言っていても始まらない。人が人を裁けるのか、突然、国民の義務ということで行わなければならないというけれど、果たしてこの私がそんな大役を果たすことが出来るのか、それに裁判の結果に恨まれても恐ろしいしと不安ばかりつのっていたら、この本を見つけたのだ。

題名も表紙も文体もかなりやわらかいのだけれど、きちんと伝えたいことは伝わってきた本だった。つまり、裁判に関わる人全てにとって、裁判というのはきちんと公になった方がよりその本来の意義を果たしやすいということ、そのためにみんなが裁判に関心を持った方がいいということが書かれていた。

色々な人間模様が描かれていて、時には不遜ではあるけれども笑ってしまったり、深く考えさせられたりした一冊。

裁判長!ここは懲役4年でどうすか (文春文庫) Book 裁判長!ここは懲役4年でどうすか (文春文庫)

著者:北尾 トロ
販売元:文藝春秋
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