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2009年9月22日 (火)

メガロマニア-あるいは「覆された宝石」への旅-

四つ角の隅で少年が二人、腕を上げ下げしている。

地面を見つめながら腕を直角に曲げ、指先を下にしてゆっくり動かしているのだ。

そうか、影をみているのだ。

じっと見つめる私の視線に気づいた少年たちは、ふっと意味ありげな微笑を浮かべたが、そのまま厳かな顔をして、その動作を続けた。

まるで何かの儀式でも行っているかのように。

メガロマニア-あるいは「覆された宝石」への旅-  

                    恩田陸 日本放送出版協会

  ★★★☆☆

中米への旅行記。旅行記だけではなく、旅先を舞台にした小説から始まりその結末で本が終わる。いかにも作者らしい旅で楽しく読み進んだ。数々のピラミッドやマチュピチュの街。焼け付くほどの強い日差しが射す日本の裏側にある標高の高い町。20日近い旅程で、作者は不思議な体験をする。それが本当のことなのか、夢なのか、はたまた彼女の頭の中の出来事なのかわからないけれど、そんな出来事が起こっても不思議でない気がしてくる。

この作者の「上と外」は傑作だが、グアテマラを旅することなく空想で書かれたというから驚く。才能が与えられている人間というのはいるのだなぁと素直に思う。

メガロマニア―あるいは「覆された宝石」への旅 Book メガロマニア―あるいは「覆された宝石」への旅

著者:恩田 陸
販売元:日本放送出版協会
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2009年9月11日 (金)

告白

文化祭費は払っておいたから気にしなくてもいいよと担任の先生はそっけなくそう言った。

家庭の事情で公立高校の授業料は免除になっていたが、我が家の家計が苦しいことを重々承知だった先生の暖かさが身にしみた。

堂々とアルバイトが出来るようにと特別の許可を学校に取り付け、アルバイト先も訪ねてくださった。

アルバイト先の採用担当者も本当は高校生は採らないんだけどね、と前置きし、僕も同じような身の上なんだよ、と採用してくれた。

友人もみんな暖かかった。

その後のアルバイト先の小さなレストランでも、いつも多めにアルバイト代が入っていた。

不幸だと思っていたあの頃を思い出すと、周りの人々の愛に恵まれたなんという幸せ者だったのだろうと感じ入る。

告白   湊かなえ 双葉社

  ★☆☆☆☆

教師の幼い娘が勤め先の中学で事故死した。しかし、事故ではなく彼女が受け持ったクラスの生徒による殺人だという。真相は、そして彼女の意図とは・・。

エイズ、夜回り先生、家族に毒薬を使用した生徒とどこかで聞いたような境遇の登場人物がテンコ盛りだ。

読み進むうちにやりきれない思いが膨らんでいく。良い人間が一人も出てこないのだ。どこかに光明があるのではと思いながら頁をめくったが、結末も最悪だった。

善人そうに振舞っている人間も全て本性は悪であるという考えのもとに作品が描かれている印象を受けた。たった一人のかけがえのない子供を殺された母親が、復讐を誓う気持ちは痛いほどわかるが、あまりにも救いがないのだ。作者は問題提起をしたかったのかもしれないけれど、後味の悪い読後感が残るばかりだ。なぜこのような作品が本屋大賞なのか理解に苦しむ。売るためなら作品の思想などどうでもいいのだろうか。

世に広く受け入れられている作者はやはり根底に人間愛がある。私は人は愛深く強く素晴らしい存在だと思う。

告白 Book 告白

著者:湊 かなえ
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