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2009年8月 1日 (土)

蒲生邸事件

雑誌を見ていて衝撃を受けた。

それは江戸時代が始まった頃に作られたお地蔵様の写真だった。

お地蔵様の頭の先からつま先まで、紐でぐるぐる巻きにされているのだ。

前を見ることも出来ず、おそらくは身動きすることも出来ないといったほどに。

そのお地蔵様を紐で縛ると願いがかなうという。

400年もの間、さまざまな人々の沢山の願いをかなえてきたのだろうか。

命がけの願い、ささやかな願い、愚かな願い。

紐に込められた願いを裁くことなく、愚痴ることなくそんなにも長い間。

必ずお地蔵様に会いに行こう、そう思いながらその小さな写真をじっと見つめた。

私もその時紐を持っていくのだろうか。

それでもきっと許して下さるだろう。

蒲生邸事件  宮部みゆき  文春文庫

  ★★★★☆

孝は予備校受験のために宿泊していたホテルで火災に巻き込まれる。意識が戻った時彼がいたのは昭和11年、2・26事件直前の蒲生邸だった。

かなりの長編だが、さすが宮部作品、一息に読んでしまった。時間旅行者が過去に行って歴史を変えるという、お決まりのパターンなのだが、それに歴史の重さ、命の尊さ、平凡であることの有難さが織り込まれている。蒲生大将とその家族は宮部氏の創作だけれど、史実も存分に織り込まれ読み応えがあり、考えさせられることも多かった。

私もやはり思う、人生をやり直せるとしてもそうしたくないし、歴史を書き直す必要は全く無いと。愚かな過ちや愛する人を失う苦しみは出来るものならなかったことにしたいけれど、全てのことには意味がある。過去を受け止め、もがきながらも生き抜いていくことが定めであるし、価値のある人生なのだと。

蒲生邸事件 (文春文庫) Book 蒲生邸事件 (文春文庫)

著者:宮部 みゆき
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» 『蒲生邸事件』 宮部みゆき [人生いたるところに机あり!]
今まで、宮部さんの作品、いくつか読んできましたが、 これが一番好きかも。 タイムトラベラーが出てくるので、SFといえばSFなんだけど そのトラベル先が「二・二六事件」! 現代史に疎い私としては、とても興味深く読みましたよ。 主人公は大学に落ち、予備校の試験を受けることになった いわば浪人生。日本史、とくに現代史には興味なし。 それなのに、単なる偶然でタイムトラベラーと会い、 思いもかけない時代へ飛ぶことに!!! そこで彼を待ち受ける、数々の事件。 そして彼の心に変化が・・... [続きを読む]

受信: 2009年8月18日 (火) 12時33分

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