ホテルアイリス
雨の日が続くとなぜか気分が晴れない。
薄暗いからなのか、絶え間なく続く雨音のせいなのか。
傘を差して出かけてもどこか濡れてしまい、不愉快だからか。
軽く痛む頭を押さえながらゆっくりと歩く。
ふとあじさいの花が目に入る。
大きな株で沢山花開くのに、晴天では鮮やかに感じない花だ。
けれど雨の情景でははっとするほど美しい。
ホテルアイリス 小川洋子 学研
★★★☆☆
17歳のマリが出会った男性は50歳ほども年上の翻訳家だった。禁断の逢引きのゆくえは・・
この作家の近年の作品から読み始めたので、すっかり勘違いしていた。初期の作品は、耽美的でありながら人間の内部、おぞましさを曝け出す作風だ。少女のユリ以外は登場人物の名前がなく、日本が舞台には思えなかった。この作品の情景は南ヨーロッパの片田舎、黄土色の壁が続く鄙びた海辺の町が浮かぶ。金髪で色白の大人しげな少女と黒髪で背が低いがっちり型の初老の男性、というように私には感じられた。
いかにも品行方正といった容貌の作者がこんな作品を生み出すなんて、やっぱり人間って、文学って奥が深い。それにしても、賞をとった作品よりもそうでないものの方が面白いのはなぜだろう。
ホテル・アイリス
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