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2009年6月21日 (日)

ホテルアイリス

雨の日が続くとなぜか気分が晴れない。

薄暗いからなのか、絶え間なく続く雨音のせいなのか。

傘を差して出かけてもどこか濡れてしまい、不愉快だからか。

軽く痛む頭を押さえながらゆっくりと歩く。

ふとあじさいの花が目に入る。

大きな株で沢山花開くのに、晴天では鮮やかに感じない花だ。

けれど雨の情景でははっとするほど美しい。

ホテルアイリス  小川洋子 学研

  ★★★☆☆

17歳のマリが出会った男性は50歳ほども年上の翻訳家だった。禁断の逢引きのゆくえは・・

この作家の近年の作品から読み始めたので、すっかり勘違いしていた。初期の作品は、耽美的でありながら人間の内部、おぞましさを曝け出す作風だ。少女のユリ以外は登場人物の名前がなく、日本が舞台には思えなかった。この作品の情景は南ヨーロッパの片田舎、黄土色の壁が続く鄙びた海辺の町が浮かぶ。金髪で色白の大人しげな少女と黒髪で背が低いがっちり型の初老の男性、というように私には感じられた。

いかにも品行方正といった容貌の作者がこんな作品を生み出すなんて、やっぱり人間って、文学って奥が深い。それにしても、賞をとった作品よりもそうでないものの方が面白いのはなぜだろう。

 ホテル・アイリス ホテル・アイリス
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2009年6月12日 (金)

家日和

夕方のニュースで十代の母親、いわゆるギャルママの特集をしていた。

金髪の長い髪を大きく膨らませた流行の髪形に、短いスカートで子育てや家事に全力投球する姿は、なかなかに心を打つ。

自分のためだけに生きて当然の年頃なのに、幼さの残る顔で子供の世話をするのは尊敬に値する。

すると、熱心に画面を見ていたこどもが暗い顔で私に言う。

「お母さんがギャルママになったら、きっとお父さんは嫌がって離婚だね。心配だなぁ。」

・・・この年になってギャルになれるものなら、なってみたい。

家日和     奥田英朗  集英社

  ★★★☆☆

家族の心の隙に生じる小さなエピソードを集めた短編集。幸せな毎日の、それでも生じる小さな不満が発端となる出来事。絡まった糸が必ずほどけるのが、この作者の作品の良いところ。着地点が必ずハッピーになるところが安心できる。最後の物語は作者自身がモデルなのかと思わせるのも作家の腕前か。

人はどうして与えられた幸せより、足りないところばかり数え上げてしまうのだろう。

少しずつ積み上げた積み木がずれているのに気付いたら、小さくため息をついて、また積みなおせばいいのだ。嬉々として飽きることない幼子のように。

家日和 Book 家日和

著者:奥田 英朗
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