金色の野辺に唄う
つつじの花が咲く歩道をゆるゆると吹いてくる風はすっかり初夏の匂いがする。
厄除けになるとも、魔よけになるとも言われている菖蒲湯は、一体こどもがいくつになるまでやるものなのかしら、と思いつつ今年も菖蒲の葉を買ってしまう。
スーパーの袋から大きく飛び出した葉を見て、ふと自分の子供の頃は菖蒲湯なんてしたことがなかったことを思い出す。私の故郷にはない風習なのだろうか。
おっとと出会わなかったら、こどもがいなかったらこんな行事は知ることもなく、実際に行ってみることもなく過ぎていったことだろう。
こうやって、また、与えられたものを一つ数える。
金色の野辺に唄う あさのあつこ 小学館 小説
★★★☆☆
まさに大往生を遂げようとしている松恵は、夫と次女奈緒子との軋轢、ひ孫の幼い日々を回想する。
平凡に生きた一人の女性とその家族のストーリーが心に染みてくる。愛に渇望した美貌の娘、孫息子の再婚相手、ひ孫の東真、花屋の店員小波渡とのエピソードが暖かい。字体も草書体が使われていて、美しい本に仕上がっていると思う。
生きていくということは尊く、美しく、暖かく、そして時に残酷だ。それでも人は定められた時を生きていかなければならない。自分のことが最後まで好きでいられるようにありたいものだ。
著者:あさの あつこ
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