« 2009年4月 | トップページ | 2009年6月 »

2009年5月21日 (木)

かつら美容室別室

自転車に高校生の男女が二人乗りしている。

後ろに座っている女の子のおしりのポケットから、おびただしい数のぬいぐるみがぶら下がっているのが見える。

恐らく携帯につけているのだろうと思うのだが、ポケットの入り口からマスコット売り場のようにマスコットがわさわさとぶら下がっているのだ。

邪魔にならないのかしらと考えつつも、あんなにもぬいぐるみが携帯につけられること、つけてみようと思う若者の思考回路に感心する。

そんなわけで、今私の携帯にも大きなマスコットが一つ、ぶら下がっている。

かつら美容室別室   山崎ナオコーラ 河出書房新社

  ★★★☆☆

淳之介は梅田さんに呼ばれて、かつらをかぶる桂さんの美容室に通うようになる。彼らのほのぼのとした日常。

なんでもないありふれた日常の話なのだけど、暖かく優しくてエッセイのようにさらりと読めてよかった。淳之介とエリの関係はいまどきの若者らしく臆病で健全だ。なんだかなぁ。もう若いということは熱く無謀なことではないのだ。若いうちに失敗しておかないと後悔するぞ。

そうか、こういうのを老婆心、というのか。

カツラ美容室別室 Book カツラ美容室別室

著者:山崎 ナオコーラ
販売元:河出書房新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月10日 (日)

容疑者Xの献身

体調がすこぶる悪いので、夕食は出来合いの弁当で済ませることにする。

こどもが「お弁当おいしかったねぇ」と嬉しそうに言うので、大人気なく答えてみる。

「お母さんのご飯はそんな風にほめてくれないね。」

するとこどもはニッコリ笑って「おかあさんのご飯はもちろんおいしいよ。それに買ったお弁当はかたむいてるし。野菜がないでしょ。」

それはかたよっているというんだよ、という言葉はもったいないから言わなかった。

すぐにそんな言い間違いはしなくなるから。

そうしてありふれた沢山の難しい言葉で、話すようになってしまうから。

容疑者Xの献身 東野圭吾 文藝春秋 ミステリー

  ★★★☆☆

直木賞受賞作。隣人の母娘を守るため、天才数学者の石神がとった行動とは・・・・。

映画化もされ大ヒットした作品。話題になったので当時は敬遠していたけれど、今回図書館で見つけたので読んでみた。ドラマ化するのにぴったりの平凡なストーリーだなと思いながら読み進んでいたものの、やはり東野作品だけにラストのひとひねりが面白かった。でも、Xの動機がやはりいまいちしっくりこない。理が通れば人の道をそんなに簡単に外せるほど、人の命は軽いものなのだろうか。

私の勝手な思い込みかもしれないけれど、この話は作者にとっての全力投球の作品に思えない。『天空の蜂』の方がガリレオシリーズより数倍力作だと思うし、やはり最高傑作は『白夜行』だろう。直木賞はなんだか納得いかない作品が多い。諸事情があるのかもしれないけれど、作品ではなく人に与えるようにしたらいいのに。

容疑者Xの献身 Book 容疑者Xの献身

著者:東野 圭吾
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月 2日 (土)

金色の野辺に唄う

つつじの花が咲く歩道をゆるゆると吹いてくる風はすっかり初夏の匂いがする。

厄除けになるとも、魔よけになるとも言われている菖蒲湯は、一体こどもがいくつになるまでやるものなのかしら、と思いつつ今年も菖蒲の葉を買ってしまう。

スーパーの袋から大きく飛び出した葉を見て、ふと自分の子供の頃は菖蒲湯なんてしたことがなかったことを思い出す。私の故郷にはない風習なのだろうか。

おっとと出会わなかったら、こどもがいなかったらこんな行事は知ることもなく、実際に行ってみることもなく過ぎていったことだろう。

こうやって、また、与えられたものを一つ数える。

金色の野辺に唄う    あさのあつこ 小学館 小説

  ★★★☆☆

まさに大往生を遂げようとしている松恵は、夫と次女奈緒子との軋轢、ひ孫の幼い日々を回想する。

平凡に生きた一人の女性とその家族のストーリーが心に染みてくる。愛に渇望した美貌の娘、孫息子の再婚相手、ひ孫の東真、花屋の店員小波渡とのエピソードが暖かい。字体も草書体が使われていて、美しい本に仕上がっていると思う。

生きていくということは尊く、美しく、暖かく、そして時に残酷だ。それでも人は定められた時を生きていかなければならない。自分のことが最後まで好きでいられるようにありたいものだ。

金色の野辺に唄う Book 金色の野辺に唄う

著者:あさの あつこ
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2009年4月 | トップページ | 2009年6月 »