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2009年2月19日 (木)

Q&A

おっとは、ショッピングセンターが好きである。

どれくらい好きかというと、私のことより好きなのではないかと思うくらいである。

新しくオープンしたと聞きつけようものなら、素早く車で馳せ参じ、嬉々として歩き回る。

けれど、一人で行くのは嫌な様子で必ず家族を誘う。

大喜びでお供をしていたこどもも大きくなり無碍に断るので、しかたなく私がお供する。

しかし私がなによりニガテとしているのは、人ごみ、とりわけ行列である。

おっとが年甲斐も無く嬉しそうに頬をゆるめ、行列に並びたがっているのに気がつかない振りをしながら、ショッピングセンターって世の中に幸せをもたらしているのかも、などと考察する。

Q&A             恩田陸   幻冬舎  ミステリー 

  ★★★☆☆

ショッピングモールで多数が死傷する事故が起きた。少しずつ明らかになったことは、予想もしていないことだった。

物語の前半は、タイトルどおり被害者への質問と回答によって進められていく。ありえなくも無い設定と展開に、読了後改めて恐怖を感じた。場の空気のようなものに大衆心理が突き動かされていく様が、淡々と解明されていく。一人一人から、事故とは全く関係なさそうな事実も拾っていくのだが、それも事故の遠因ではと思わされてしまう。

昨年はこのブログにアップする暇もないくらいに、この作者の作品にどっぶりハマリ、ほとんど読破してしまった。好みはあると思うけれど、やはりこの作者が力量を発揮するのは本屋大賞を受賞したもののような作風より、この手の作品だと思う。これほど上手い作家がどうして未だ直木賞をとれずにいるのか、甚だ疑問。

Q&A (幻冬舎文庫) Book Q&A (幻冬舎文庫)

著者:恩田 陸
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2009年2月16日 (月)

吉原手引草

梅の香りが清清しい。

陽の光もぐんと明るくなって、小鳥のさえずりも軽やかだ。

服装も軽くなって、心も弾む。

これで、くしゃみと鼻水さえなければ、最高の気分なんですけれど。

吉原手引草         松井今朝子 幻冬舎 小説

  ★★★★☆

 直木賞受賞作。ある男が吉原を騒然とさせた出来事について、関係者一人ずつに順を追って聞いていく。それは吉原一を謳われた花魁葛城にまつわる話だった。

 小説を読み進んでいかなければ、何が起こったのかわからないという話の進め方もよかったし、まるで未知だった廓での作法なども興味深かった。当時吉原の真ん中で繰り広げられていたのは、金持ちの男の贅と見栄を尽くした恋愛遊戯だったのだ。風流と言えば聞こえはいいが、格式ばってもしょせん睦み事、それに大枚叩く男の愚かさよ。けれど色々な理由で吉原に辿り着いた人間たちは、文字通り体を張って、客からお金を吸い上げて生きていかなければならないのだ。

 この話の結末もよかった。品格と声高におっしゃる紳士淑女にもぜひ読んでいただきたい小説。

吉原手引草  /松井今朝子/著 [本] 吉原手引草 /松井今朝子/著 [本]
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2009年2月11日 (水)

風に舞いあがるビニールシート

二月も半ばになってくると、クリスマス前から街に溢れていたイルミネーションもぐっと少なくなって心地いい。
私は偉そうなことを大きな声で言えるようなりっぱな人間じゃないけれど、やはり夜の街が光の洪水になるのは後ろめたい気がする。
温暖化が原因で沈み行く国があると知ってしまった以上、以前のように無邪気には喜べない。
こどもが歓声をあげて喜ぶ住宅街の電飾を見ながら、行くこともないだろう遠い南国をぼんやりと思い浮かべてしまうのだ。

風に舞いあがるビニールシート 森絵都 文芸春秋 小説
  ★★★★☆
直木賞受賞の短編集。国連の難民事業で死亡した元夫の死を、受け入れられない主人公の葛藤を描いた表題の作品も良かったけれど、私が好きなのは「鐘の音」。仏像修復士が依頼された寺の不空羂索(ふくうけんじゃく)観音像に心酔してしまう話が良かった。余りにも不器用で、周囲とぶつかり仏像に逃げ込んでしまう男の心。自分をなにがしかの人物と思いたい人間としての誇りとあせり。結末に救いがあるのはやはり御仏のお計らいなのか。
この作者はポジティブな人間観なのがいい。にんげんってなんだかんだ言っても、捨てたモンじゃないと思う。

風に舞いあがるビニールシート Book 風に舞いあがるビニールシート

著者:森 絵都
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