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2008年12月13日 (土)

ノルウェイの森

月が明るい夜だ。

透き通るような夜の空気の中にくっきりと浮かび上がっている。

月にはうさぎがいると言うなとつらつらと考えながら、月を見上げる。

いつも思うのだけれど、やっぱりそうは見えない。

随分目尻を垂らして泣くのを我慢している顔にしか見えない。

そう思いながら見ていてふと気づく。

首をうんと右側に曲げて見るとうさぎの餅つきに見えることに。

そうして私はしばらく首を大きく傾けたまま、細い路地を歩いた。

ノルウェイの森  村上春樹 講談社文庫 小説

  ★★★☆☆

僕は亡くなった親友の恋人、直子と偶然再会した。逃げるように上京した東京の街角で。そして、淡々とこなしていく学生生活の中で緑と出会ってしまった。あの頃の僕の、懸命に生きた足跡。

この小説は私にとって特別なものだった。悪い意味で。

それまであまり知られていなかったこの作者の大フアンだった私は、この作品で大きく変わった作風に幻滅したけれども、それに反して世の中に大きく受け入れられ、なんだか15年以上手に取ることを止めてしまった。

再び村上作品を読み始めたきっかけは、このブログに以前書いたのでここでは書かないけれども、映画化される話を聞いて、またふと読み返したくなったのだ。

やはり、上手い。ではあの頃の私がなぜそんなにも忌み嫌ったのか。

あまりに登場人物が自死し過ぎるのだ。恵まれた環境の将来有望な若者達が、世の中に対応できないというだけの理由で。その当時、私の親しかった職場の同期が恋に破れて自ら命を絶ったばかりだった。正直に言って、彼女を失った大きな悲しみと同じくらい先立った彼女に深い憤りを感じたのだ。残されたものの苦しみは非常に大きく、どんなことがあっても天の定めるその時まで、人は生き抜いていかなければならないと強く思ったし、その方がずっと難しく価値があるのに、この小説は命を軽く扱っているようにしか思えなかった。

そして性が男性の視点からのみ描かれていて、重要視されすぎていて違和感が大きすぎたのだ。

今もその感想は変わらないけれど、大きく違うのは、そういう思い違いもあって当然だと思えるところなのだ。男と女は全く違う生き物で、だから惹かれあうのだし、そこが面白いのだと。理解しあう道程が恋だというのだと。

そして、この小説に幻滅したあの頃の私の幼さがいとおしいと思うのだ。

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2008年12月 7日 (日)

アフガンの男

新聞の一面は今日も暗い記事ばかり。

PCを開いても、テレビを見ても目を覆いたくなるような、耳を疑うようなことが繰りかえされている。

そんなことを考えていたら、車が赤信号で交差点に停まった。

小学生くらいのおかっぱの女の子が背筋をぴんと伸ばして右手をまっすぐに上にあげ、横断歩道を渡っていく。左の肩には習い事の道具が入っているのか、大きな布地の鞄をかけ、大真面目な顔で歩いていく。

大切な仕事をこなしているみたいに、真剣にきちんと振舞っている。

横断歩道を渡り終わると、きっちり右を向いて、次の信号が青になるのを待ち、信号が変わるとまた先ほどと同じように一歩一歩歩いていった。

そんな様子がなんとも微笑ましくて思わず、ハンドルを握っていたおっとに言う。

「こどもはいいねぇ。」

「うん、かわいいね。」彼は静かな声で答える。

上手く言えないけれど、やっぱり、世の中っていいことで溢れているような気がする。

アフガンの男  フレデリック・フォーサイス 角川書店 スパイ小説

  ★★★★☆

殺害されたテロリストのPCにアルイスラ(神聖なる魔法の旅)と名づけられたテロ計画が発見された。しかしその詳細は全く解明できない。それを探り、未然に防ぐべくある男が選ばれた・・・。

上巻は、この作品にいたるまでの歴史が描かれており、それが大変興味深かった。著者特有の、事実の中にフィクションを織り交ぜていく筋運びなのだが、今回もそれに唸らされてしまった。なぜ自らの命を厭わないほど西側に憎しみを抱いているのか、どうやってテロリストが教育されていくのかなども詳細に描かれている。いくつもの要素が複雑に絡み合い、それがまた新たな禍根を生む・・・このような世界を幸せに生き抜くために信仰は存在するのではなかったか。どのように死んでいくのか、というためだけに神はいますのか。重い問いかけが残された一冊。これからを生きていく人たち必読の本。

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