ノルウェイの森
月が明るい夜だ。
透き通るような夜の空気の中にくっきりと浮かび上がっている。
月にはうさぎがいると言うなとつらつらと考えながら、月を見上げる。
いつも思うのだけれど、やっぱりそうは見えない。
随分目尻を垂らして泣くのを我慢している顔にしか見えない。
そう思いながら見ていてふと気づく。
首をうんと右側に曲げて見るとうさぎの餅つきに見えることに。
そうして私はしばらく首を大きく傾けたまま、細い路地を歩いた。
ノルウェイの森 村上春樹 講談社文庫 小説
★★★☆☆
僕は亡くなった親友の恋人、直子と偶然再会した。逃げるように上京した東京の街角で。そして、淡々とこなしていく学生生活の中で緑と出会ってしまった。あの頃の僕の、懸命に生きた足跡。
この小説は私にとって特別なものだった。悪い意味で。
それまであまり知られていなかったこの作者の大フアンだった私は、この作品で大きく変わった作風に幻滅したけれども、それに反して世の中に大きく受け入れられ、なんだか15年以上手に取ることを止めてしまった。
再び村上作品を読み始めたきっかけは、このブログに以前書いたのでここでは書かないけれども、映画化される話を聞いて、またふと読み返したくなったのだ。
やはり、上手い。ではあの頃の私がなぜそんなにも忌み嫌ったのか。
あまりに登場人物が自死し過ぎるのだ。恵まれた環境の将来有望な若者達が、世の中に対応できないというだけの理由で。その当時、私の親しかった職場の同期が恋に破れて自ら命を絶ったばかりだった。正直に言って、彼女を失った大きな悲しみと同じくらい先立った彼女に深い憤りを感じたのだ。残されたものの苦しみは非常に大きく、どんなことがあっても天の定めるその時まで、人は生き抜いていかなければならないと強く思ったし、その方がずっと難しく価値があるのに、この小説は命を軽く扱っているようにしか思えなかった。
そして性が男性の視点からのみ描かれていて、重要視されすぎていて違和感が大きすぎたのだ。
今もその感想は変わらないけれど、大きく違うのは、そういう思い違いもあって当然だと思えるところなのだ。男と女は全く違う生き物で、だから惹かれあうのだし、そこが面白いのだと。理解しあう道程が恋だというのだと。
そして、この小説に幻滅したあの頃の私の幼さがいとおしいと思うのだ。
著者:村上 春樹 著者:村上 春樹
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