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2008年5月 2日 (金)

黒と茶の幻想

こどもが大きなため息をつきながら、「あーあ、魔法が使えたらなぁ」と言う。

新学期でこどもなりにいろいろ大変なのだろう。

「いろんなことが簡単なのに。」

「そうだね、でもね」とつい答えてしまう。

「みんなが魔法を使えると、悪い人も使えてしまうんだよ。そうしたら、何にも努力しない人もいろんなことを出来てしまうんだよ」と続けて、自分の言葉に思わずはっとする。

そうか、なんてこの世は公平に出来ているのだろう。

もちろん、環境や能力やら、スタート時点で大きな差がある場合もあるけれど、だけどやっぱりどんな人も努力しなければ、良くはなっていかない。

「捨てず、諦めず、根気よく。そうやって生きていこうね。」

黒と茶の幻想     恩田陸   講談社  小説

  ★★★★☆

40歳を前に大学の同級生の利枝子、節子、彰彦、蒔生はY島への旅に出た。それぞれの過去への美しい謎を解明するために。

かなりの長編にも関らず、一気に読みきってしまった。登場人物たちと一緒に島を巡り、J杉を見るために旅していたような錯覚に陥った。この作家にひきつけられるのは、どの話も、なにげないフレーズにはっとさせられるような一文があるところだ。どんな人間にもこだわりがあって、なかなか自然体というのは難しいのだけれど、この作者は根っこのところでいろんなことが理解できているのに、力がふっと抜けていて押し付けがましくない。だから、独特の小説だけれど、安心して読んでいられる。読後感のよい作家さんなのです。

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