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2008年5月20日 (火)

麦の海に沈む果実

そこには立派な薔薇のアーチがあり、大輪の薔薇が咲いている。

沢山の白い薔薇の中に、ちらほらと真紅の薔薇もありそれは見事なものだ。

けれど人がほとんど見当たらない。

いつもは、近所の子供たちや老人達がのんびり過ごしている場所なのに、大輪の華が開くこの季節はなぜか閑散としている。

かくいう私もゆっくり楽しもうとしないのはどうしてだろう。

芳しい香りを漂わせて大振りの花が堂々と咲き誇っている。

重すぎる花のために、か細い枝がひどくしなって、花が不安定に揺れるのもお構いなしに。

そんな様子をしばらく眺めているとなんだか落ち着かないのだ。

気高い薔薇の生命力に圧倒されてしまうのだろうか。

今日も薔薇が美しく咲いている。

麦の海に沈む果実  恩田陸  講談社 小説

  ★★★☆☆

そこは経済的に恵まれながらも、複雑な家庭の子息達が集められた全寮制の中高一貫校。湿原に面した学校へ2月にやってきた理瀬の、亡くしたものを取り返す日々が始まった。

登場人物はみんな謎めいていて、独特の雰囲気に包まれた恩田ワールドで一気に楽しめてしまう。話の筋とは直接関係ないのだが、前回読んだ『黒と茶の幻想』に出てくる人物と同一と思われる少女がいて、そこも楽しめた。他の登場人物も他の作品に登場しているのかしらと、ぜひ他の作品も読まなくてはという気にさせられる。う~ん、売り方がうまい。

でも、面白いから読んでしまうんです、これが。

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2008年5月 2日 (金)

黒と茶の幻想

こどもが大きなため息をつきながら、「あーあ、魔法が使えたらなぁ」と言う。

新学期でこどもなりにいろいろ大変なのだろう。

「いろんなことが簡単なのに。」

「そうだね、でもね」とつい答えてしまう。

「みんなが魔法を使えると、悪い人も使えてしまうんだよ。そうしたら、何にも努力しない人もいろんなことを出来てしまうんだよ」と続けて、自分の言葉に思わずはっとする。

そうか、なんてこの世は公平に出来ているのだろう。

もちろん、環境や能力やら、スタート時点で大きな差がある場合もあるけれど、だけどやっぱりどんな人も努力しなければ、良くはなっていかない。

「捨てず、諦めず、根気よく。そうやって生きていこうね。」

黒と茶の幻想     恩田陸   講談社  小説

  ★★★★☆

40歳を前に大学の同級生の利枝子、節子、彰彦、蒔生はY島への旅に出た。それぞれの過去への美しい謎を解明するために。

かなりの長編にも関らず、一気に読みきってしまった。登場人物たちと一緒に島を巡り、J杉を見るために旅していたような錯覚に陥った。この作家にひきつけられるのは、どの話も、なにげないフレーズにはっとさせられるような一文があるところだ。どんな人間にもこだわりがあって、なかなか自然体というのは難しいのだけれど、この作者は根っこのところでいろんなことが理解できているのに、力がふっと抜けていて押し付けがましくない。だから、独特の小説だけれど、安心して読んでいられる。読後感のよい作家さんなのです。

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