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2008年1月30日 (水)

まぼろしハワイ

夕暮れ時、偶然通りかかったその場所は、まるで緑の綿が一面に敷き詰められているようだった。

ふうわりと、ぎっしりと。

あたたかそうな、うれしそうな。

そこは都会の片隅に申し訳なさそうに広がる、小さな畑だった。

なんだっけ、これはなんだっけとほんの少し考えて、人参の葉っぱだと思い出す。

かわいらしく、ぼわぼわと。

大地に眠る実をいたわる様にそっと広がっていた。

それを眺めていたら、あぁ早くうちへ帰ろう、急にそう思った。

まぼろしハワイ  よしもとばなな  幻冬舎  小説

  ★★★☆☆

短編集。 

あざみさんはわたしと年が近いけれど、パパの奥さんだ。パパが亡くなって、ハワイへと私達は癒しの旅にやってきた。

この本は、デビュー当時からのファンとしては久しぶりに満足した作品ばかりだった。私は表題の作品より「銀の月の下で」が特によかった。両親が離婚した女の子の話で、最初の結婚に疲れ、新しい幸せをつかみたい母親の気持ちが中立に描かれていながら、それを受け入れつつも母の罪のない残酷さに傷つく子供の痛みが丁寧に描かれていて、心に染みた。

会話だけで話が進んでいく場面になると、男性が話しているのか、女性が話しているのか混乱することが多々あった。どうしてなのかと考えてみると、登場人物の男性が男言葉を使っておらず、語尾が性別に関わらず同じなのだ。よしもとさんが東京出身だからなのだろうか。それとも単にソフトな男性が好みなのかしら。

まぼろしハワイ Book まぼろしハワイ

著者:よしもと ばなな
販売元:幻冬舎
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2008年1月19日 (土)

風の墓碑銘

私は、新聞を端から端まで読むのが好きだ。

こんなこと言うと、なんだかインテリぶっていると勘違いされるので人には言わない。

私が特に楽しみに目を通しているのは、広告の部分だ。

テレビのCMと違い、単に商品とその値段を紹介しているだけの単純なものなのだが、こんなもの買う人がいるのだろうか、というような商品が頻繁に広告されている。

私にはありがたいのかどうか全くわからないようなものがえらく高額だったりして、そんな広告を見つけると、どんな人がこういうものを買うのかとあれこれ想像をめぐらす。

記事と記事の隙間にある小さな広告も、さっぱり意味がわからないものがあったりして、もしかしたら、すわ暗号か?重大な何かがやりとりされているのか、などと小さく興奮する。

そういえば、今日の新聞にも面白いものがあったんだっけ。

風の墓碑銘(エピタフ)  乃南アサ  新潮社 ミステリ

  ★★★★☆

音道シリーズ。

東京下町の借家跡から男女と胎児らしき白骨死体が発見された。その後、所有者の老人が隅田川公園で撲殺されるが、彼が入居していた老人ホームのスタッフの青年には前科があった・・。

このシリーズはなんといっても長編がいい。今編も一気に読んでしまい、寝不足になってしまう。事件そのものというより、この音道の男を見る目の無さと言おうか、頑固で融通がきかないところといおうか、そういう人間としての嫌なところが上手く描かれていて、つい感情移入してしまい、ぐいぐい引き込まれていく。でも、私がいつも感情移入してしまうのは、彼女に正当に評価されていない中年刑事の滝沢の方なのだけれど。だって、女のずるさはよくわかってますからん。

風の墓碑銘 Book 風の墓碑銘

著者:乃南 アサ
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2008年1月15日 (火)

テンプル騎士団の遺産

海外に住む友人と、久しぶりに電話で話す。

コンピューターを使ったテレビ電話で、なんと料金も無料のものだ。

時々気になる雑音もあったけれど、通話には問題なく、映像もクリアでつい長話をしてしまった。

友人が住んでいるその町は、私もひところ住んでいたことがあり、共通の知人も多い。

それらの人々の近況やご家族の話を聞いたりして、今更ながらに時が流れるのは本当に早く、そういう私自身もあの頃とはすっかり生活が変わったと実感する。

それでも変わらず親交を深められるのは、新しい技術によるところも大きいなぁと思う。

私があの街で一人で暮らしていた頃は、毎日アパートのポストを覗いては、手紙がきていないかと思ったものだ。ほどなくしてファックスをつけ、待たずして返事が来ることに感激していたのに、今ではテレビ電話なのだ。

思えばこうやって、自分の想いをネットに載せて、いつか会えるとも知れない人に読んでもらえるのも嬉しく、これからどんな世界が待っているのかと思うとなんだかワクワクする。

テンプル騎士団の遺産 スティーブ・ベリー  エンターブレイン 小説

  ★★★☆☆

デンマークで古本屋を営むマローンと会う約束をしていた、アメリカ捜査機関での元上司のステファニーが何者かに襲われた。ステファニーが古書の購入を依頼したハンセンは何者かに殺害され、その古書はステファニーの夫とも親しかったマローンの家主が競り落としたという。一体その本には何が書かれてあるのか、その秘密とは・・・。

テンプル騎士団の秘宝を巡るフィクション。キリスト教国の人々にとって中世の時代はつきないロマンを感じるもので、色々な物語が書かれているものなんだなぁと感心する。日本人にとっての徳川の秘宝?信長の死の真実?そんな感じなのだろうか。この話も良く出来ていて、謎解きあり、どんでん返しありで楽しめた。多分、敬虔な信徒は眉をひそめるだろうけれど、これも映画化されたら面白いと思う。

テンプル騎士団の遺産 上巻 Book テンプル騎士団の遺産 上巻

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テンプル騎士団の遺産 下巻 Book テンプル騎士団の遺産 下巻

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2008年1月 4日 (金)

夜のピクニック

元旦の午後、自宅近くの神社へ家族そろって初詣に行く。

例年なら故郷で正月を過ごすのだが、おっとの仕事の都合で帰省しなかったのだ。

普段はヒトケの無い小さな神社なので、簡単にお参りできるだろうとたかをくくっていたら、神社をぐるりと取り囲むように長い行列が出来ている。

なぜか、ベレー帽を被った中年の男性や女性が一定の間隔で立っていて、誘導してくれる。

神社の所属じゃないだろうし、ボーイスカウトにしては年季が入りすぎてるし、、などとつらつら考えていると目があったので、会釈する。

こどもは待ち時間ができると、すぐにしりとりしようとせがむので、元旦から言葉探しを始めることになる。

しりとりをしながら境内への短い階段を上りきり、参拝する。

今年も嬉しそうにおっとは破魔矢を買い、子供たちはおみくじを引く。

こんな穏やかなお正月をいつまで続けることが出来るのだろう。

家族が増えてずっとずっと続いていくといいなぁ、と年の初めに当たり前の幸せに感謝する。

夜のピクニック   恩田陸   新潮社  小説

  ★★★★☆

貴子は密かな決意を心に抱きながら、高校生活最後の歩行祭に臨む。小休止をとりながら夜通し歩き続け、学校へ帰ってくるという単純でありながら厳しい行事の中で、学生たちは一体何を掴み、何に気づくのか。

読みながら高校生の瑞々しい感性と、ささやかな出来事に胸を時めかせていた時代を思い出した。大人になって出会うであろう困難に比べるとささやかではあるけれど、十代の子供たちにとっては大きな問題に揺れ動きながら、向き合っていこうという主人公達がすがすがしかった。物語はただ歩いていくだけで複雑な展開もなく、大きな事件も起こらないけれどじんわりと心に染みた。

「今を未来のためだけに使うべきじゃないと」この一節はしみじみその通りだと思う。全てのことは後々によかったと思えるようになる。人生の道草や休憩や無駄や失敗さえも、全てきらめく宝になっていくのだ。

夜のピクニック Book 夜のピクニック

著者:恩田 陸
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