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2007年12月25日 (火)

所轄刑事・麻生龍太郎

クリスマスの朝、こどもは飛び切り早起きして大喜びしていた。

サンタさんがやってきたからだ。

子供部屋からおもちゃを抱えて「おかあさ~ん、見て、見て!」とやってくる。

文字通り弾ける様な笑顔で。

普段は何度も起こしたあげくようやく目覚めるというのに、今日は普段より一時間も早い。

そんなに早く起きたのに、出かける前におもちゃで遊んでしまい、いつもより慌しく出かけていった。

その後、こどもの部屋を片付けているとシールの裏に書いた手紙がおいてあった。

「さんたさん、来てくれてありがとう」

所轄刑事・麻生龍太郎   柴田よしき  新潮社 ミステリ

★★★☆☆

本当は白バイのりになりたかった。新米刑事の龍太郎はそんな想いを抱きつつも、地味な案件を事件として解決していく才に恵まれている。大学時代からの恋人とは未来は考えられないのに、別れることもできないまま続いている。捨て鉢なわけでない、でも満たされない一人の男がいる・・。

短編集。主人公は恵まれているにもかかわらず現状に満足していない。臆病なのか、欲張りなのか、仕事に対する姿勢も、恋人との関係も受身で全体的にトーンが暗くなりがちな作品だった。それなのに引き込まれてしまうのは、実際の生活でも、理想とは違った現実に折り合いをつけながら、自分を納得させて生きていくのであり、それがシビアに描かれているからなのだろうか。警察小説で主人公が男色というのも、女性作家だからこそという気がして面白かった。

所轄刑事・麻生龍太郎 Book 所轄刑事・麻生龍太郎

著者:柴田 よしき
販売元:新潮社
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2007年12月11日 (火)

恋愛寫眞 もうひとつの物語

夕暮れ時、ビルの谷間に紅の大きな太陽が沈んでいく。

音もなく、そして思いのほか速く。

夕日は、まるで強い力にひっぱられているかのように、ビルの陰に吸い込まれていった。

息を呑むほど美しくて思わず心の底がじんとする。

そんな光景に通りを行く人は関心もなく、家路を急ぐ。

けれど、私だって、規則正しくこんな営みが繰り返されていることに心を留めることもしないで、毎日を送っている。

人が見ていても、見ていなくても、ただきちんと自分の果たすべきことをこなす、そんな風に生きていかれる強さを持ちたい、そう願う。

恋愛寫眞 もうひとつの物語   市川拓司  小学館 小説

  ★★★☆☆

18の春ぼくらは出会った。子供のように小柄で風変わりな静流、そして、僕が一目で恋におちた魅力的なみゆきと。僕が本当の愛に気づいた時、静流は・・・。

主人公の誠人に思いを寄せる静流が魅力的に描かれている。地味で子供のような風貌ながら、才能もあり、一途に好きな男性に思いをよせる健気さが愛らしい。最後までいじらしくて胸を打った。作者独特の、小説の中でしかありえない結末がすごく良かった。

主人公の男性は己をよくわかっている誠実な人物であるけれど、コンプレックスが強く、大人の女性ならともかく、こういうタイプが若い女性にもてるってことはない気がする。

いつも思うのだけれど、この作者はもう少し、男性を魅力的に書いてもいいんじゃないかしら。

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