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2007年11月 8日 (木)

みずうみ

父は体も大きく、豪快な人だった。

家族のことなどお構いなしに自由に生きて、怖いものなんてないような人だった。

そんな父にも一つだけ、苦手なものがあった。

苦手というより、恐れていたと言った方が正しいのかもしれない。

それを見かけただけで、大きな声を出して追いやろうとするし、高いところから見下げられると、身動きとれないほどなのだから。

身の毛もよだつという表現があるけれど、それがぴったりとくるそんな父の狼狽振りに、日頃彼を恐れていた私は胸がすくような思いがしたものだ。

父が帰らぬ人となった今、「猫」を見るたび、弱い父を懐かしく思い出す。

みずうみ   よしもとばなな  フォイル 小説

  ★★★☆☆

アパートの窓からいつも見ていた中島君は医学部の院生。もちあみを脇に挟みながら孤独に耐える彼と複雑な家庭に育った私は、出会うべくしてであったのかもしれない。彼と私の癒しの日々が始まった。

作者がずっと描いてきた問題がこの作品にも取り上げられていて、今もドコカにあるかもしれない怖さと哀しさが描かれている。よしもとさんらしい作品で、どんどんページが進んだ。

この小説は光景の描写というよりも、感情や思考がみっちりと描かれすぎていて、読み手が膨らませる余地がなく、なんだか息苦しかった。道草や周りの風景を楽しむ余裕がなく、目的地へと誘導されているような感じとでも言おうか。それが作者のねらいなのかもしれない。

みずうみ Book みずうみ

著者:よしもと ばなな
販売元:フォイル
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