ニッポニアニッポン
学校を出た頃、焦燥感にかられて仕方が無かった。
何を焦っているのか、何が不安なのかよくわからなかった。
将来への不安、自分の能力へのあきらめ、そして不公平な社会への不満、そんなものにも思えたし、そうでないような気もした。
その頃、そう母に話すと軽く笑って、「それは若いからよ」と答えた。
いくつかの季節がめぐって、あの頃の母の年齢になろうとする私は、あの頃のように強くは無いものの、今でもなお、おぼろげな焦りを感じている。
ニッポニアニッポン 阿部和重 新潮社 小説
★★★☆☆
鴇谷春夫は17歳。名前に鴇(とき)という字があることから、トキと自分を同化させ、特別な存在であると思い込む。片思いの相手を執拗に追い回し、故郷を追われた彼はネットと妄想の世界にはまりこんでいく。
あまりにリアルで、形を少し変えれば実際にいつ起こってもおかしくない、と恐ろしくなった。抑えることも、あきらめることも、折り合いをつけることも知らず、ちやほやされてきただけの大きな子供。感謝は知らないのに不満と自尊心ばかりの存在。恵まれた境遇がなぜか不幸な人間を作っていく。なんだか空しい読後感。この作者の切り口はいつも激しくて、もう少し救いがほしいなぁと思ってしまう。
私は思う、やっぱり人はみんな誰かのお役に立つために生まれてきたんだよ、その人にしかできない方法で。
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ニッポニアニッポン 著者:阿部 和重 |
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