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2007年1月31日 (水)

チグリスとユーフラテス

少女の頃、朝が大嫌いだった。

また一日が始まってしまうのかと、暗い気持ちを抱えて目覚めたものだった。

自分の環境を嘆き、なんとかノルマをこなすように毎日を過ごしていた。

それにも関わらず、私は明るい将来への希望があった。それを馬鹿にしない友人があった。問題を抱えてバラバラではあったけれども、肩を寄せ合う家族も。

ほんの少しの良いことに心を向けて毎日を過ごす、そうやって少しずつ時間が経っていた。

いくつかの素晴らしい出会いがあって、いつのまにか幸せだ、と思える今の自分がいる。

チグリスとユーフラテス  新井素子  集英社  SF

  ★★★★★

地球から移民した人たちが住んでいた惑星ナイン。移住当初は繁栄したものの急速に人口が減少していき、「最後の子供」となったルナは、コールドスリープで眠っていた過去の人々を起こしていく。ルナは、そしてナインに一体意味があったのか、どうなっていくのだろうか。

高校生の頃、夢中になって読破していた新井さんの最近のSFを見つけて、懐かしくて思わず手に取った。主人公の独り言で話が進んでいくという文体と、少女趣味な世界観は全く変わっておらず、半ば驚きながらそれでもすっかり堪能してしまった。難点を言えば、どの年齢層の口調も同じで、90歳の女性まで「なんつー、えーい、もおっ」と話しているのはかなりの抵抗があった。でも自分自身を振り返ってみると、少女の頃から口調は変わっていない気もする、老婆になっても同じ口調というのは・・・正しいのかも?!

チグリスとユーフラテス Book チグリスとユーフラテス

著者:新井 素子
販売元:集英社
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2007年1月29日 (月)

なんといふ空

私は車の運転が苦手だ。だから出来るだけ運転はしないように行動する。

けれど、冬の夕方や、強い雨の日はどうしたって車を出す羽目になる。

夕方、溢れる駐輪と沢山の歩行者がいるハンバーガーショップの角を曲がると、向かいのビデオショップの前にはバイクまで停めてある。ゆっくりと前進すると、営業用の大きなワンボックスカーがこちらへ向かってきた。もうぶつかりそうだ。

そういう時は動かないに限る。かなり顰蹙をかっていたけれどしばらくの間、じっとしていたら、相手の車がなんとかすり抜けてくれた。

本当に大変だった、と友人に話したら、

「全然問題ないじゃない。私なんてどうにもならなくて、対向車の人に代わりに運転して下さい、って頼んだんだから。でも断られて本当に恥ずかしかったわ。」

対向車の人は、運転は断ったけれどきちんと誘導してくれたそうだ。

なんといふ空   最相葉月  中央公論新社  エッセイ

  ★★★★☆

自分の周りに起きたことを丁寧につづってあるエッセイ。映画化された「大阪君」についての話もさることながら、高校二年生向けの雑誌に掲載された文章が心を打った。家庭の経済問題、受験の失敗、弟のひきこもり、その後離婚などの数々の問題が起こり、少しずつ改善し、時間が経って自分を肯定していけたこと、どんな時でも理解してくれる人が現れることがさらりと書かれている。人生って、ドラマのようには一足飛びには解決しない。でもそんな風に人は生きていくことを、それでいいのだということを、若い人たちがほんの少し理解できるといいなぁと思った。

なんといふ空 Book なんといふ空

著者:最相 葉月
販売元:中央公論新社
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2007年1月23日 (火)

ドリームバスター

以前にも書いたように、テニスが楽しい。

何も考えず、単純に嬉しかったり、悔しかったり。

大人になってから始めた趣味は、スポーツに限らずなんでも楽しいのだけれど、気持ちとは裏腹に、いかんせん腕前はなかなか上がらない。

ラケットを振れば入らなくていい力が入り、バタバタとコートを駆け回る。

先日、コーチが私を見て真顔で尋ねた。

「あなた、いのしし年?」

・・・猪突猛進。

ドリームバスター   宮部みゆき  徳間書店 SF

  ★★★★☆

DB(ドリームバスター)は夢の中に逃げ込んだ逃亡犯を追う賞金稼ぎ。少年のシェンはマエストロと出会い、逃亡犯の母を捜すためDBとして生きていく。

この人のミステリは文句なく面白いけれど、SFもやっぱり期待を裏切らない。作品ごとに変わる文体も、作者の人間への愛もやはり同じで、どんな人も丁寧に書かれている。ずっとこのシリーズを読んでいたいような、早く結末が知りたいような・・・。

ドリームバスター Book ドリームバスター

著者:宮部 みゆき
販売元:徳間書店
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2007年1月17日 (水)

ひとかげ

私には何も誇れるものはないけれど、友達には恵まれた。

いつも会っているような友達はいないけれど、何年も会っていなくても、変わらず暖かな気持ちが抱ける友達が何人かいる。

思いがけず連絡が来たり、再会した時も過ぎた時間は感じない。

互いの幸せを心の底から喜べること、そんな贅沢をかみしめる。

ひとかげ    よしもとばなな   幻冬舎  小説

  ★★★☆☆

小児精神科医の私は鍼灸師のとかげに求婚し、とかげに秘密を打ち明けられる。お互いの抱える生い立ちの秘密が、どうしようもなく引き付けあう原因だったと知る。私達はどこへいくのだろうか・・・・。

「とかげ」のリメイク。やっぱりこの人は若い頃の作品がいい。若い人の素晴らしいところは、未熟で迷いがあったり、だけど無鉄砲でどうしようもなく純粋で、だからこそ失敗が許されるところだと思う。よしもとさんの若い頃の作品は、色々なところにぶつかって迷っているところに魅力があったのにな。

主人公の母親のくだりが大きく修正されていたのは、筆者が実際に母親になって「母性」というものを悪く書けなくなったからなのか。

ひとかげ Book ひとかげ

著者:よしもと ばなな
販売元:幻冬舎
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2007年1月 9日 (火)

100回泣くこと

お正月に遠くに住む両親に会いに行く。

一年ぶりで会うおっとの両親は少し白髪が増えていた。

気を回しすぎて傷ついたり、疲れたりしたこともあったけれど、いつの間にか少しずつ、すこしずつ自然な関係になっている。

そして、素っ頓狂な声で、突拍子も無いことを話す子供が、ぎこちない大人たちに笑いを与えてくれる。

結婚の時、「もう、ここはあなたの家ではないのよ。」と私の母が言った冷たい言葉が、何より暖かいはなむけだったことに今更ながらに気づく。

100回泣くこと  中村航  小学館  小説

  ★★★☆☆

僕がプロポーズした彼女はきっちりとした人だった。時間が正確で、将来の計画もきちんと立てる実直で誠実でかわいい人だった。そんな僕達の純愛物語。

文章のリズムが心地よい小説。なんと言ったらいいのか、主人公は男性なのに、心が寄り添いやすかった。最近の若い男性作家が書く恋愛小説は「純愛」で全く迷いがない。ベテランの男性作家の作品に比べて、責任の重さに逃げ腰になったり、複数の女性に対する興味など男の弱さや狡さがまるで感じられない。これほど一直線だと、女の立場としては嬉しいような、窮屈なような。

100回泣くこと Book 100回泣くこと

著者:中村 航
販売元:小学館
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